秋、すみきった青空が頭上にかぎりなく広がり、
おもわず、わが胸に抱えてみたいと思う。
手をのばしてみたが、抱えきれなく、
ためいきと共に自分の方が空にすいこまれてしまった。
空から足元に目をおとせば、高原の岩場に名前も分からぬ花。
青、赤 黄と色とりどりの小花がかれんに咲きみだれている。
耳をすませば、わずかな風にもかかわらず、
花や葉がゆれていることにより、さわさわと音をたてて、月が流れてゆく。
自然につつまれて、時をわすれ、
景色をひとりじめにして時のたつこともわすれていた。
この景色をひとりじめ出来る喜びと、
その反面、一人しかいない寂しさがおそってくる。